終の仕事

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終の棲家という日本語はあるけど、終の仕事なんていう日本語は無いみたい。

私が言いたいのは、そのお客様への最後の仕事と言うことです。

このおばあちゃんは、昔商売をやっていたので、しゃきシャキ物事を言うので話していて気持ち良い。
隠居してからも、人柄か家に人の出入りが多かった。 でも息子夫婦とは折が会わず、一緒には暮らしてなかった。

一人暮らしのおばあちゃん。 

と言っても、息子夫婦は2件隣なのでほとんど同居と同じなんだけどね。

私への依頼は、それこそ電球1個を交換するのも呼ばれていた。
電球交換1分で、話の相手1時間。 

そんな おばあちゃんは、あるとき転んで骨を折った。 
それ以来、出歩かなくなり、次第に家に遊びに来る客も少なくなっていった。 

私への依頼は、昔から変わらない。
でも、依頼の内容がますます細かくなり、話相手の時間も増えていった。 
寂しいあまり、終いには『お茶相手をしてくれ』というホンネの依頼まであった。

しばらく依頼が無いな?と思っていたら、施設へ入ったという風の便りが届いた。

たまに息子夫婦にあうと、おばあちゃんに近況を聞いた。
結局私も気になっていたんだよね。

町会の回覧板に、おばあちゃんが亡くなった知らせが届いた。
それと同時に、息子夫婦から照明工事の依頼が来た。

息子夫婦の家へ行くと、おばあちゃんの家に案内された。
照明工事の場所は、おばあちゃんの家だったのです。

おばあちゃんは、顔に白い布が乗せられ、布団に横たわっていた。
『顔見るかい?』という息子さんの声に私は顔を横に振った。

仕事の依頼内容は、おばあちゃんの寝ているこの部屋が暗いので、
明るい照明器具にして欲しいという事だった。 

これから親戚など集まるので、明るくきれいにして欲しいという事だった。

店に戻り、在庫の照明器具から、適した器具を選定し持参した。

照明器具は、横になっているおばあちゃんの真上にある。 
私は『おばあちゃん布団動かすよ』と言って、布団をスーッと動かした。
布団を動かした感触は、人間じゃなく、おも石のようだった。

脚立を立て、照明器具を交換した。 
当店に在庫ある照明器具は、基本的に昼光色のランプが標準で装着されている。
昼光色のランプは、人の顔が青さめた色になり、おばあちゃんに悪いと思った。
かと言って、電球色のような色だと葬儀には向いてない。そこで、昼白色のランプに
交換して、照明器具の交換は終えた。
『おばあちゃん、バイ バイね』

やがて葬儀屋さんやら、いろいろな業者が葬儀の準備を始めた。
私は、そ-っとその場を後にした。

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