土足のまま上がってくださいと部屋に通された

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亀戸は東京の中でも流れ者が多い街です。

故郷を捨てて、過去を捨ててたどり着いた人々。 

ワケありというのかな。これ以上は聞いてはいけないと会話を閉ざす事しばしば。

大阪のあいりん地区ほどではないけど、いろいろな団体?組織? それらから管理されている人が亀戸にはいます。 

生活保護とかそういう公的な仕組みとは違う世界から保護されている人々。 

『土足のままで上がってください』そう通されたあるアパート。 

床は少し沈む。 床の木片がはがれ、ささくれている。

靴を脱いだら確かにトゲが刺さる。 

照明はランプがついていなかった。

ここにエアコンを取り付けて欲しいという事だった。 

『このままだと、この夏に死んでしまうかも知れないのでね』

そういう担当者。 

生かさず殺さずの世界がそこにあるようだ。 

ここに住む住民を私は知っている、時おり身体がぐたーっとしている所を道で見た事がある。 

確かにあの身体の具合だと、真夏にこの部屋で過ごすとなると、エアコン無しでは死亡するかも知れない。 

そんな事を考えながら、この部屋にエアコンを取り付けた。

梅雨の季節はまだいい。 真夏日も時おりあるけど小雨の時はエアコン無しでも過ごせる。 

でも梅雨があけ、真夏日が続き、熱帯夜が続く日が必ず訪れる。 

毎年必ずあるのが、身体がぐたーっとなってから駆け込みで依頼が来るエアコン工事。 

この夏は大丈夫と思ってエアコンが壊れているのに、ガマンをしていた人々。 

こうなると、順番ではありません。 

身体の具合を見て健康そうな人や、ホテルに避難できる財力のある人は後回しにしてもらう。 

量販店で3週間待ちと言われた人が『助けてくれ~』と哀願される。 

それらを含めて、身体の具合の悪るそうな人を優先する。 

数年前、この判断をまだ実施していないころ、依頼の順番を守って作業していた。 

恐らく今でもほとんどの店はそうしていると思う。 

でも、その時、あるお客様が熱中症で入院してしまった。 

エアコン工事予定の前日に。 

悔しくて、悔しくて、その時から考えを変えた。 

身体の具合の悪くなりそうな人を優先させよう。 

今の栄電気の方針はこのようにしています。 

このやり方で順番の変更願いをしたお客様が怒り出し、キャンセルされた事もありました。

事情を説明して快く順番を譲ってくれた方もいます。

キャンセルされてもそれは仕方がないと思って割り切ってます。 

譲ってくれた方には、感謝の気持ちで接します。 

梅雨が終わるとまたその季節がやってきます。

予定されていても、もしもの時は変更させていただく場合もありますのでご承知くださるようお願いいたします。